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第百十六話 映画「ラーメン侍」幻の脚本⑤

前号からの続き

 映画「ラーメン侍」幻の脚本シリーズ第5弾、今回もお楽しみいただきたい。

5 火事場の枕

〜前回の続き〜

 昇はきなこに「お前はここにいろ」と、手振りで指示し、屋台を飛び出すと、光が歩道に絵を描きながら、真っ赤に染まった夜空を見上げていた。昇は光の手を掴んで走り出した。山村もあとに続いた。数台の消防車が3人を追い越して行く。
 駆けつけると、長屋のすぐ裏手の木造家屋がメラメラと音を立てながら炎に包まれていた。消防の放水が幾筋もの弧を描いている。
 昇は野次馬をかき分けて長屋に駆け寄った。
 「嘉子は!」
 すると長屋の前で嘉子がひとり立ちつくしていた。なぜか枕を抱きしめている。昇はほっとした。
 「大丈夫か!」
 嘉子は枕を抱きしめながら頷いた。 
 幸いにも長屋は風上にあり、延焼は免れ、火災はその1軒のみで鎮火されつつあった。
 消火作業を見守る4人の後ろ姿。
 「嘉子ちゃん、その枕は何ね?」
 横の嘉子を見ながら山村が言った。
 「こん人の枕」
 嘉子は昇の方をしゃくりながら答えた。
 「とうちゃんの枕がそげん大事やったとね」
 山村は笑った。
 昇はようやく我に返って嘉子の姿をまじまじと見ながら、少し責めるような、そしてからかうような口ぶりで言った。
 「火事場で枕ひとつ抱えて逃げ出す慌て者の話は聞くばってん、お前はそれを地でいっとるにゃあ、げさっかぁ(見苦しい)」
 周りの野次馬たちも釣られて笑った。しかし嘉子は何かを押し隠すように、ただ苦笑いするだけであった。

*(光)『実はその枕が、その後の一家の危機を救ってくれることになろうとは、誰も知りませんでした』

 〜(注釈)この枕の謎は、私の脚本では解き明かすことなく、尻切れトンボになってしまったが、映画ではキチンと描かれた。観た方はご存知と思うが、そう、屋台の強制立ち退きが決まり、失意の昇の前に嘉子が例の枕を持ってきて言った。「アンタ店舗ば出さんね」「そげなカネどこにあるや」「火事のときこれを持って逃げた私を笑ろうたやろ」そう言いながら嘉子は枕の縫い目を解いた(映画では包丁で引き裂く)。そば殻の中から出てきたのは昇名義の預金通帳。そこには店舗を出すには十分の預金残高が記帳されていた。それを目の当たりにした昇は、何も言わずうついたまま・・・・、目には光るものがあった。

と、まあこのシーンに繋がる訳だが。ちなみに、これも実話である。〜
さて、まだまだ続く幻の脚本シリーズ、次号も乞うご期待。

次号へ続く

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