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第百一話 後継者の洗礼

 時々テレビで放送される「○○24時」という番組は皆様ご存知と思う。そう、全国の警察に密着したドキュメント番組だ。私も嫌いではないのでよく観ているが、その度に思うことがある。それはあの「ボカシ」。コレは何とかならんのか?検挙のシーンなど、周りが住宅地なら景色は一切ボカされ、被疑者の車両も、被疑者自身も当然ボカされて(これは仕方ない)、更に音声まで変えられている。画面一面ボカされた中でマトモなのは、ナレーターの声とテロップのみである。これではテレビの意味がない。ボカすならば、ワクチンの注射針を刺すシーンにしてほしい。

 前フリはこれくらいにして本題に入ろう。

 私が正式に大砲ラーメン2代目として跡を継いだのは平成元年7月、30歳のときであった。親の商売を継ぐということは、ある洗礼を覚悟しなければならない。それはまず、店の内外問わず、「先代と比較」されるということ。そのあげく「良くは言われない」。私の場合、初代であるオヤジが強烈な個性の持ち主だったせいか、お客さんには信者的ファンが多かった。中には、自称・うちのオヤジの元舎弟を名乗る人とか、リアルにそのスジの人もいた。私が店を継いだ当時は私が厨房に立っていても、オヤジは常にカウンターの端の後ろに折りたたみ椅子を置いて、店内の様子を見ていた。常連さんは、そんなオヤジの姿を見るだけで安心したようにラーメンを食べていた。オヤジがそこにいないときは不安げに私に聞く「オヤジさんは?」と。「ちょっと出かけてます」などと言おうものなら、「そうやろ、今日のはマズイ!」から始まって、説教へと続く。そこにオヤジがひょいと現れた途端、その説教は止む。「今日のラーメンはどげんやった?」オヤジが訊くと 「ガ、ガバうまかったです」と言いながら、私から目をそらしつつサッサと帰る。

 やがて3年ほどで、常連さんも私のラーメンを認め始めたようで、「オヤジがいないとマズイぞ」クレームもほとんど無くなっていた。しかし、その頃オープンしたばかりの新店に多くの主要メンバー送り込んだため、本店は悲惨な人不足に陥り(覚悟の上だが)、大忙しの昼ピークを私と1人の新人社員、2人のパートさんで回していた。そんなときに、ついに例のクレームが発生した。しかも相手はそのスジの組長さん。カウンターから大声で私を呼ぶ。「おい兄ちゃん!ちょっと来い。」私は外に連れ出され、店の前に停められた高級車の助手席に乗せられた。すかさずお決まりの説教が始まった。

 「お前が小さい頃から俺は知っとる。ここ数年お前の姿がなかったが、どっかで修行しよったとか?‥‥何て?〇〇やと!そりゃ外食産業やんか!サラリーマンやんか!ラーメン屋の長男坊ならラーメン屋で修行すっとがスジやろうもん!」私は助手席のフロントガラス越しに、店の厨房でアタフタしている新人社員の様子が気になって仕方がなかった。虚に聞いていた説教で、ふと感じたのは、「この組長さんは、ラーメンの味に関しては何も言わないな。ただ私の経歴を確認したかったのかな」と。それを最後にその組長さんは姿を現さなかったが、数年後、突然キチンとしたスーツ・ネクタイ姿で現れた。組長さん曰く、「久しぶりやね兄ちゃん。俺、組を解散してカタギになったよ。いま、ある会社でサラリーマンやっとる。」

 今度は私が、その経歴を知りたい、そう思った。

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