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第百三十九話 息子からの電話(1)

 このタイトル、決して「オレオレ詐欺」の話ではありません。この春、僕の息子は晴れて大学生となり、長崎市内で1人暮らしを始めました。3月末の引っ越しのときには、手伝いを終えて久留米に帰る僕たちを、アパートの前で1人ポツンと見送る姿が、とても寂しそうでした。
 それから2ヶ月、息子からの電話はリンとも鳴らず、たまに来るメールには「友だちもたくさんできました。この前は、音楽サークルをフラリとのぞいて、かるくギターを弾いたら、先輩たちから『君は天才!是非うちのサークルへ!』などといわれました。毎日が夢のように楽しいです」というような、とりあえず寂しかったのは、1人暮らし第1夜だけのようでした。息子は、とにかくあの地獄の受験戦争を乗り越えたあとの開放感を満喫しているのでしょう。僕としては、いまはあえて「学生の本分はどうの」とは言わずに、ハメだけは外さぬように見守っております。
 ところが先日、息子から突然電話がありました。僕が何気なく電話に出ると、何やら深刻そうな声で話すのです。内容は、まず、いまのアパートのことが気になると。聞くと、引っ越してすぐ、アパートの中で右足のかかとを怪我した。それはさほどの怪我ではなかったけれど、その怪我が治ったと思ったら、今度は左足のかかとに、同じような怪我をした。さらにその怪我が治ったら、風邪をこじらせて1週間寝込んでしまった。その頃から、どうもこのアパートに何かあるのでは・・・、そう思い始めた。それでも毎日が楽しいものだから、夜に帰って寝るだけのアパートのことは、さほど気にはならなくなったようです。ところが先日、ついに生まれて初めての、強烈な心霊現象に遭遇したとのこと。それは深夜1時、友人のアパートから帰る途中、ある公園にさしかかったとき起きたそうです・・・。

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