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第百話 夢でみた夢

 劇の中で、別の劇が演じられることを〈劇中劇〉といいますが、夢の中で別の夢をみることがあります。〈夢中夢〉とでも言いましょうか、今回は、最近僕が見た夢の話をひとつ、小説風にお話ししましょう。
 ~ 私は六才の少年。父の屋台の前の歩道にチョークで絵を描いていると、突然ギャングが現れた。そのギャングは黒いソフト帽を被りながらも、歌舞伎に出てくる黒子の格好をしている。顔を隠す黒い垂れ布には白い太い字で〈?〉と書かれている。変なギャングである。ギャングはおもむろに私を拉致しようと抱きあげた。「父ちゃん助けてー」私はもがきながら弾みでギャングの?マークの覆いを引き剥がした。そこに現れた顔は、なぜか五木ひろしだった。ようやく父が屋台から現れた。なぜか父は右手に唐草模様の風呂敷、左手に緑色のジュースのビンを持っている。「ちょっと待っとけ」父は側のクリーム色の電話ボックスに入り、何かいそいそやりはじめた。風呂敷から衣装を取り出し、着替えているようだ。私とギャングは呆然と父の作業を眺めている。やがて電話ボックスのドアが静かに開いた。現れた父のコスチュームは凄かった。
 上半身は青地のピッタリ長袖シャツに、胸には目にも鮮やかな赤い〈S〉のマーク。スーパーマンである。しかし予算の都合か、下半身は茶色の腹巻きと福助のモモヒキ、ブーツは黒のゴム長。顔を覆うマスクは夜店で買った〈オバQ〉のお面。変態そのものである。
 ギャングは私を抱いたまま腰を抜かした。二人を見下ろす父の背には唐草模様のマント(衣装を包んでいた風呂敷)が風になびいている。私を手放して後ずさりするギャングに向かって父は言った。
 「もうちょっと待て」 父は持っていた緑色のビンを突きだした。
 「これはホウレンソウ一〇〇パーセントの炭酸飲料だ。今からこれを一気に飲み干す」
 まるで罰ゲームだ。
 ジュースを飲み終えた父は、不敵な笑みをうかべて言った。
 「フッフッフ・・・ゲップ。俺はスーパーマンでもポパイでもない、ゲップ。実は!」
 いきなり父はモモヒキをずりおろした。
 「父ちゃんやめて!」私は目を伏せた。歩道には父の衣装が次々と脱ぎ捨てられていく。
 恐るおそる私が目を開けると、そこにはホウレンソウのジュースで緑色に染まった〈胃袋〉だけが宙に浮いていた。不気味である。そしてその胃袋は言った。「透明人間なのだ!ゲップ」胃袋はユラリと揺れた。
 面妖である。ギャングは奇声を発して逃げ去った・・・。
 六才の私は二段ベットの上で、びっしょり寝汗をかきながら寝言を言った。
 「父ちゃん・・・それなら最初から変な衣装は必要ないやん・・・」
 父は床にあぐらをかき、酒を飲みながらベットを見上げてつぶやいた。
 「寝言か、フッ・・・変な夢でも見たか・・・ゲップ」 ~
 
 何の教訓にもならない、そんな夢の話・・・大変失礼しました。