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第九十五話 初代雑食記

 若いお嬢さんたちの会話で“食べ物”は古今東西の定番ネタ。しかし、飽食の時代といわれる昨今では、その会話の中に“キライな食べ物自慢”という新ネタが加わったようです。「私、アレがニガテ」「そ~私もソレ、キラ~イ」「アレもキモ~イ」などと、出るわ出るわキライな食べ物のフルコース。戦後の食糧難当時の人が聞けば、張り倒してやりたい会話でありましょう
 僕はよく社員たちに伝えています「食べ物の好き嫌いの多い奴は、食べ物屋で働く資格はない」そして「食べ物の好き嫌いは、人間への好き嫌いに直結する」と。
 そこで久々にご登場願うのが、大砲ラーメンの“初代”こと、僕のオヤジであります。
 オヤジの場合、食べ物の好き嫌いが皆無というより、イノシシのような雑食性というか、人がふつう食べないものまで平気で食べる、悪食のプレデター(捕食者)でありました。
 僕が子供の頃の夏は、よく家族で高良内の谷川に遊びに行きました。そこは久留米市内を流れる小さな野川・高良川の源流です。冷たく、清らかなせせらぎには沢山のカワニナ(小型の巻き貝:ホタルの幼虫のエサになる)や沢ガニがいます。水遊びをしている僕たち兄弟の横で、オヤジはせっせと川原の石でカマドを作り、枯れ木や流木の焚き火の上に、川の水を入れた飯盒を乗せています。それが沸騰すると、そこらで沢山とれたカワニナと一つまみの塩を放り込み、一煮立ちさせたら“カワニナの塩ゆで”の出来上がり。その食べ方といえば、細長い円錐状の貝の頭を五円玉の穴に差し込み、頭の先をポキッと折ります。その折れた殻のところの口をあて、ちゅるりと中身を吸い込むのです。何とも野趣あふれる食べ物ですが、これがなかなかウマいのでありました。ところがオヤジはカワニナだけでは飽き足らず、今度は川の中の石をそこら中ひっくり返して、沢ガニを捕りはじめました。僕がそれも煮るのかなと思いきや、あろうことか、そのカニを生きたまま口に放り込み、バリバリと噛みはじめました。オヤジの唇からはカニのハサミが出ています。そのハサミはまだ動いています。僕たちが驚きと恐怖で見つめていると、オヤジはそのハサミを指でヒョイと押し込み、何食わぬ顔(食ってるくせに)で生きた沢ガニを平らげてしまいました。~ちなみに沢ガニには寄生虫がいることもあるので良い子のみんなはマネしないでね~
 こんなこともありました。猫という動物は、捕らえた小動物などの獲物はすぐには食べずに、親猫や飼い主の前に持って行き、自慢げにその獲物をもて遊ぶ習性があります。ある日うちのタマ(日本一ありふれた猫の名)が、一羽のスズメを捕らえました。タマも例にもれず猫の習性どおりに、そのスズメを飼い主に見せに来たのです。それがタマの不幸でした。飼い主であるオヤジは、タマのスズメをヒョイと取り上げると、いきなり羽毛をむしり取り、ガスコンロであぶってペロリと食べてしまいました。その一部始終を見ていたタマは、ただ呆然。苦労の末にやっと捕らえた自分の獲物を平気で横取りして平らげる、そんな飼い主に愛想を尽かしたのか、その数日後にタマは家出してしまいました。
 このような悪食プレデターのオヤジでしたが、偏食を許されない環境で育てられた僕たち兄弟は、おかげで食べ物屋を営む最低条件は身に付きました(と言うより、オヤジに食べ物の好き嫌いを言おうものなら、僕たちは沢ガニやタマのスズメにされていたでしょう)。
 いまの若い人たちに、うちのオヤジのような“ゲテモノ喰い”まで押しつけるつもりはありませんが、清流のカワニナや、小川の芹、山里の野いちごのジャム、海の磯に行けばナンボでも獲れるミナなどの貝類など、スーパーやコンビニに行かなくても、美味しくて、しかも無添加の食べ物がまだまだ野山や海には沢山あります。それを知ってほしいですね。・・・本格的な食糧危機が来る前に。