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第七十六話 号外・ラーメンピック(下)

 乙女たちが考案した創作ラーメン、その名は“愛秋(あいしゅう)ラーメン”作品テーマは「信愛らしく 美味しく 美しく」に決定、そのレシピの骨格も決まりました。あとは試作を繰り返しながらこの骨格に肉付けをしなければなりません。残された一ヶ月を全力で突っ走るだけです。
 でもさすがに「健康栄養学科」の学生、包丁を持つ手も、中華鍋を振る手も真剣そのもので、基礎も出来ています。また洗い物や最後の清掃も進んでやります(これが肝心)。開発作業は、スープ・麺・トッピング、それぞれのグループが別教室・または学校外(麺工場訪問等)に分かれて同時進行でやる訳ですが、数日後に試食会をやってみると、意外にもその三つのアイテムが丼の中で違和感なくピタッと合いました。ちょっとした感動。さらに、試食会を重ねる毎に作品の完成度が増すのです(応援団チームの踊りも同様)。やがて“愛秋ラーメン”の全体像が見えはじめました。その姿は次のとおりです。
 
●スープ:とんこつと鶏ガラをブレンドし、香味野菜とワインで余分な臭みと雑味を除き「あっさりした中にコク」を出す。味付けは、昆布と醤油をベースに“植物性の焦がしネギ油”で香ばしさを出し“完全無化調”に挑む。
 
●麺:とんこつ用の“低加水のストレート”という定番の麺に、わずか数本の“色つき麺(赤・緑・黄)”を加え、色のアクセントをつける(たぶんラーメン業界初)。
 
●トッピンッグ:“実りの秋”を感じる旬のキノコ類と“紅葉”を表現するための色野菜類をクルトン状にカットして炒めたものを盛りつけ、中央には、鮮やかな柿色に染められたウズラの柿玉子(懐石料理の技)を一個配置。食味の変化と栄養のバランスを考えて“豚の角煮”を添える。また食材は全て、“地産地消”の考えで、地元産を使用する。
 
 これが“愛秋ラーメン”の姿です。
 まるでプロの創作レシピです。これが完成すれば、年末によくやるテレビのラーメン王でも優勝間違いなしでしょう。
 しかしラーメンピックは、ひとりのスターを誕生させることが目的ではありません。僕は終始学生たちに絶対ルールを課していました。それは「全ての食材の下処理から出来上がりまで、四八人全員の手作りとする」ということ。そして最後にプロのコツを伝授しました。それは「調理の最後に、君たちの“愛”という調味料を、ひと振り加えてほしい」ということです。
 このひと月、四八人の乙女たちは、突然現れたラーメン屋のオヤジたちの指導を素直に受け入れ、そして見事に突っ走ってくれました。完成した“愛秋ラーメン”その容姿は、この子たちの心を反映して最高の美人でした。
 やがて本番。彼女たちは前夜遅くまで、さらに当日は早朝から仕込みです。一一時の提供時には、ブース前には長蛇のお客様。疲れ知らずの彼女たちは、元気に声を掛け合いながら本当に楽しそうに調理していました。
 お客様の評価は、言わずもがな。食べる表情で解ります。ステージでは“くるトン応援団”が、元気な踊りで会場に華を添えてくれています。客席のウエイトレス担当の子たちも楽しそう。
 こうして二日間のラーメンピックは、幸福感に包まれながら終了しました。
 これが本来の“祭り”の姿ですね。今回つくづく感じました。今までの「いかめしいラーメン店主たちが、自分のプライドだけのために火花を散らし合う」という、市民不在のフェスタから、八年目にして小規模ながら本来の“市民の祭り”に帰結した気がしました。
 ある学生が僕たちに言いました。「この二年間の学生生活で一番の想い出になりました」と。いま僕の自宅の机の上には、祭りのあとの彼女たちの集合写真を立て掛けていますが、その彼女たちのはち切れそうな笑顔を見るたび思います「君たちの方こそ大切なことを教えてくれた」と。