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第四十九話 雨天結構

 今年の久留米の夏は、なんかヘンやったですね。
 夏本番である盆前の時期に『九月下旬並み』という肌寒い日が続いたかと思うと、秋の気配を感じるはずの盆過ぎに、いきなり三十六度という酷暑の日が続きました。ツクツクボウシの出番も九月まで順延といったところでしょうか。
 そう、『九月まで順延』といったら筑後川花火大会。この西日本一の規模を誇る久留米の花火大会は『久留米・水の祭典』のフィナーレを飾って八月五日に開催される予定でしたが、なんと二回連続の雨天順延となり、三度目の開催予定日は九月十七日という、ツクツクボウシも死に絶えた秋風の吹く日に決まったそうです。しかし、しょんなかですね、雨と花火ほど相性の悪いものはないですから。
どこかの花火大会のように「主催者都合の『雨天決行』で、増水した川の中州に花火師たちが取り残されてヘリで救助された」というのも考え物ですもんね。やっぱし、ときに意地悪でも天の意志には素直に従ったがヨカとです。
 『天の意志』といえば、八月四日の水の祭典のときの夕立。この短時間の通り雨で、夜の『一万人の総踊り』が中止(順延ではなく完全中止)になりましたが、僕はこの雨は、天の意地悪じゃなく、灼熱のアスファルトを冷やしてくれた天の『恵み』であり、これこそ『水』の祭典と思ったのですが…。
 これは僕の友人から聞いた話。
 ~突然の夕立で、水の祭典の総踊りが中止になった夕方のこと。激しかった雨もウソのように止み、総踊り会場である明治通りの歩行者天国の交通規制も解除され、出場予定の踊り子さんも見物人も、皆ガッカリしながら家路につき始めた頃、六角堂広場のあたりで十人ほどの浴衣を着た小学生の女の子たちが寄り添うように泣いていたそうです。友人が「どうしたと?」と聞いてみると、女の子たちは小学六年生のなかよしで、「卒業してみんながバラバラになる前の『小学生時代最後の共通の思い出』にと、この総踊りをとても楽しみにしていました。みんなでずっと練習してきたのに、中止になって本当に悲しい」と、お母さんに着せてもらった浴衣の袖を涙で濡らしながら話してくれました。
 すると、その話を聞いていたヨッパライのおじさん(僕ではありません)が、「お嬢ちゃんたち、ここで踊らんね。おっちゃんたちが見てやるけん!」やがて半ベソで踊り始めた十人の女の子で、六角堂広場がにわかに小さな総踊り会場になりました。しだいに笑顔になって踊り続ける女の子たちを、道行く人たちも足を止め、優しく眺めていたそうです。
 この夜、久留米の町のあちこちで『にわか総踊り会場』が自然発生したそうです。
人の想いというものは、何があっても『雨天結構(決行)』なのですね。