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第四十話 ラーメン屋の中のドラマ

 僕の店Tラーメンの本店に、M君という高校生のアルバイトさんがいます。小柄で童顔な彼は、とても高2には見えない幼い容姿をしていて、高校入学直後アルバイトを始めたばかりの頃など、彼には大きすぎるエプロンをつけてチョロチョロ動く姿を見たお客さんから「小学生を働かしちゃイカンばい」と言われたほどです。その頃のそんなM君のお話。

ある日、Tラーメン本店はその日の営業も終わりに近づいていました。客席には最後のお客さん(小学2年生くらいの男の子とそのお母さん)ひと組だけでした。やがてそのお客さんも帰られ、閉店時間の9時になりました。スタッフが外の照明を消し、後片付けを始めようとしたその時、突然M君が消えたのです。慌てたスタッフたちが店中を探しても、どこにもM君の姿は見あたりません。騒然となったスタッフたちでしたが、やがて誰かが近所の公園でポツンとブランコに座っているM君を見つけました(まるで黒澤映画「生きる」のラストシーン)。
 T副長が駆け寄ってそっとのぞき込むと、M君はなぜか泣いているのです。T副長は安堵しつつも一瞬「俺、今日Mに何かやかましく言ったやろか?」と心配になり、自らを問うてみても、思い当たるフシはありません。そこで優しく尋ねてみると、M君は涙をポロポロ流しながら話し始めました。
 以下、M君談。「さっき、お母さんと子供のお客さんがおっちゃった(いらっしゃった)でしょ。僕がお水を持っていったら、お母さんが『昔ラーメン二杯でいくらですか?』ち訊かっしゃったけん『900円です』ち答えたっですよ。そしたら、そんお母さんは財布から小銭ば全部出さしゃって、一枚づつ数えらっしゃったとです。そいが、何円か足らんやったごたるふーで(足りなかったみたいで)注文のラーメンは一杯になったとです。そして僕が運んだ一杯のラーメンば二人で…、小皿に分けて、少しずつおいしそうに…ほんなこつおいしそうに食べよらっしゃったとです。僕はそげな子供とお母さんば見よったら、なんか知らんばってん、可哀想になって、悲しゅなって…、涙ん出てきたけん外に出たとです。すみません」
 それを聞いたT副長はそんなM君の優しい心にとても感動し、「その時おれに一言その母子のことを言ってくれれば…」と言いかけたものの、子供のように純粋なM君の目からこぼれる涙を見ていると、それ以上何も言えなかったそうです。
 テレビドラマの中にはしばしばラーメン屋が出てきますが、現実のラーメン屋の中にはテレビドラマより素晴らしいドラマがあります。この話、もう少し続けさせてください。