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第十話 上海拉麺事情・上

 先日、上海に行って来ました。「なんだ、今度は上海かい。どーせ“麺の本場中国の味”とかなんとか言って、ウダウダと中国の食文化を批評しながら、祖国日本のラーメンにもアレコレ物申すってやつだろう」なんて声が聞こえてきそうです。めっそうもない。そんなつもりはありません。たかだかこの世に生を受けて40年そこそこの久留米のラーメン屋の倅が、ましてチョット覗いた程度のパック旅行で、4,000年の歴史を持つ国の食文化を論ずるなんぞ、10年、いや、3,960年早いってもんです。実際、旅行の滞在日が短すぎて、地元上海の料理の味をゆっくり堪能する暇もなく、いわば“匂いを一瞬嗅いで来た”に過ぎないのですが、僕なりに感じた“中国の匂い”その話に、少々おつき合いください。
 11月20日出発。ある団体(と言っても旅行参加者はわずか7名)のお誘いで参加させていただいたものですが、僕にとっては初めての中国行きです。その日、最後まで一度も笑顔を見せてくれなかった中国某航空のスチュワーデスに別れを告げて、僕はあこがれの国に降り立ちました。「嗚呼中国。儂好上海。長い歴史のなかで、文化・民族あらゆる面で我が国と関係が深い大陸の国。そして、我が生業のラーメンの故郷中国に、僕はついに来たのだ。」空港出口で、そんな感慨にふけっている半ば放心状態の僕に、イキナリけたたましいクラクション。ここは歩行者の横断歩道、しかも信号は青、クラクションの主は信号無視の15年前のワーゲン・サンタナ。僕が慌てて横断歩道を渡ろうとすると、またもクラクション、今度は反対から来た信号無視の20年前のトヨタ・カローラが、僕の尻をかすめて走り去る。青信号を命がけで渡り終えた僕は、ふと思いました「この国には運転免許の制度など無いのかも知れない」と。でもこれも、“この大陸のフトコロの深さ”なのかも知れません。
 やがて、我ら一行を迎えに来たのが、日本語が堪能な地元ガイドのお兄さん付きの、見たこともない中国製マイクロバス(やはり年代物)でした。このバス、当然の如く赤信号で出発。歩行者の波と自転車の渦も、これまた信号おかまいなしのスクランブル交差点、そこを縫うように、一人も跳ねず、一人も轢かずに見事に走り抜けます。
 さらに、何気なくバスのスピードメーターを眺めてみると、なんとメーターの針は0を指して全く動いてません。驚いてガイドのお兄さんに訊くと、「このバスを手放すとき高く売れるように、メーターの接続を外して走行距離がカウントされないようにしている」とのこと。一行唖然。そのままバスは高速道路へ入り、スピードメーターは0のまま、次々と乗用車やトラックを追い抜いて、矢のように疾走しています。僕は、ふと思いました「このフトコロの深い大陸には、車検制度と交通法規は無いのかも知れない」と。ハタハタと破れたカーテンが風になびく車窓から外を眺めると、季節はずれの黄砂と見まごうほどの、濃いスモッグ越しに、上海の近代的高層ビル群が、排気ガスの雲海に浮かぶようにそびえ立っています。一行は、ガイドのお兄さんの挨拶や道中での注意事項など聞く余裕もなく、ただひたすらこの旅の無事を祈るばかりでした。