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第十三話 久留米弁童話「桃太郎」

 むかしむかし、桃太郎が鬼ケ島へ向かう道中のこと。「モモタロさん、ちょっと待ってくれんですか」呼び止められた桃太郎が振り返ると、そこには3匹のケモノがいた。 ~ん?サル、イヌ、キジ・・・、何と無節操な取り合わせ。しかも人語を駆使するケモノ・・・、面妖ばい~
 話しかけたのはサルだった。サルは卑屈な薄ら笑いを浮かべ、手もみをしながら桃太郎にすり寄ってきた。「モモタロさん、そのお腰に着けとらっしゃるモンは、ひょっとして『山吹色の菓子』じゃなかですかね?」
 桃太郎は、この極めて非常識な状況を理解しようとしながらも、ある秘策を頭にめぐらせた。
~この腰の袋にはキビダンゴしか入っとらんとに、それば小判ち思っとる。バカばい。しかし待てよ、俺は今から単身鬼退治ばせにゃならん。さらに1人で戦うよりゃ、あいつらに加勢させた方が有利ばい。まずキジは空から物見(偵察)ばさせて、鬼の動きを逐一報告させる。サルは木の上から石どん投げさせりゃよか。あのイヌは猟犬のごたるけん、それこそ鬼を追い立てさせて、しまいにハラいっぱい噛みつかせりゃ楽勝ばい・・・ムフフ~
 そこで桃太郎はサルに言った。「オホン(咳払い)いかにも、この袋の中身は山吹色の菓子である。お前らは少しわけて欲しいとでも思っとるとやろうが、初対面のお前らは図々しいにも程がある。これは鬼退治の大切な軍資金である。しかし何か?お前たちが鬼退治の助太刀でもしてくれるというのか?そうであるなら拙者もチト考えてもよい」
 ニヤリと笑ったサルは、後ろに控えている2匹のもとへ戻り、何やら秘密の評定をはじめた。まず悪知恵の働くサルが提案。「おい、やっぱしありゃ小判やったばい。鬼退治の軍資金げな。そこでたい、俺たちゃ助っ人のフリばして、モモタロのスキをみてその小判ばマンマとせしめてやろうち思うとばってん、どげん?」キジは「ケーン」とうなずいた。イヌは「せしめたカネはピシャーっと3等分せなでけんばい、ワン」サルは膝をたたいて「よっしゃ決まった」
 やがて桃太郎と3匹の傭兵契約もまとまり、鬼ケ島へ向けて腹黒さ満々の小隊の行軍が始まった。
 道すがら、サルは桃太郎の腰の袋をチラ見しつつ、ご機嫌とスキを伺いながら話かける。「モモタロさん、さっきからちょっと気になっとったことば聞いてよかですか?気は悪うせんで下さいね。あのー・・・」「こん傷のこつか?」桃太郎には左の額から右のあごにかけて長く深い傷跡があった。「俺は桃太郎やろが。当然桃から生まれたったい。あんジイさん、大ナタで思いっきり桃ば袈裟懸けに切りやがった」「あっナールホドですね」と、言いかけてサルは腰の袋に手を伸ばそうとしたが、桃太郎は素早く袋の位置をずらした。後ろからそれを見ていたイヌとキジは顔を見合わせ、キジが言った。「あの袋、軽くね?しかもチャリンとも聞こえん・・・」キジは桃太郎の背後から思い切って袋に飛びつき、鋭いくちばしで袋を引き破った。「うわっ!何すっとか」慌てて袋を押さえた桃太郎の足下に転がり落ちたのは2個のキビダンゴ。「なんじゃこりゃあ!」一瞬松田優作の顔になったサルは怒り狂った。「ダ、ダンゴやんか!」イヌも吠えた「しかも2個。ピシャーっと3等分でけんやんか」3匹は口をそろえて言った。「何が山吹色の菓子かやん!」「ま、待て。話せばワカル」桃太郎は言い訳をする間もなく、3匹にボコボコにされてしまった。そして半死半生の彼は地面に横たわったままつぶやいた。
「きな粉をまぶしたキビダンゴやから、山吹色の菓子やろうもん。・・・
もう家に帰ろ」
 
 前回続いた重い話の、軽い口直しでした。