2.「清湯系」と「白湯系」
 

 まあ、こんな状況なので「ラーメンは旨ければいい」ということにして、べつにラーメンの分類化などどうでもいいことかも知れませんが、「君はどんなラーメンが好き?」と問われたときのために、僕なりのラーメンカテゴリーをまとめてみました。

 昔から中華料理の世界では、「清湯(ちんたん)」「白湯(ぱいたん)」という言葉がよく使われています。端的にいえば、「清湯」とは澄んだスープ、「白湯」とは白く濁ったスープのことです。

 かつて戦後間もない時代(昭和20年代)、主に中国から引揚げてきた日本人たちが、全国各地で、今のラーメンの原形である「支那そば」を誕生させ始めた頃、そのほとんどは、大陸で習った見よう見まねの清湯スープでした(実は、九州でもこの頃は「支那そば」と呼ばれ、スープも澄んだ清湯スープでした)。やがて、蔑称とされた「支那そば」が「中華そば」と改称され始めた頃、久留米のある店の主人がスープの火加減の失敗で偶然誕生させた白湯スープ、これがいわゆる現在の白く濁った豚骨スープの原形とされています。

 そして昭和30年代「中華そば」は、清湯スープも白湯スープも、ひとくくりにされたまま「ラーメン」という名に変わり、いつのまにか混乱した分類化の中で今に至ってますが、 僕はこの時代に着目しました。

 今でこそ、ラーメンは日本のひとつの食文化として、立派にその地位を得た観がありますが、当時は、伝統のない国籍不明のその食べ物に対して、食べる側も作る側も文化的な価値観などなく、ましてこれほど地域差の激しい特徴を持つこの食べ物を、全国的視野でダイナミックに研究しょうとする人は皆無。当然、ラーメンが地域、特に九州を中心にそのスープの系統が大きく2つに分かれ始めた歴史の瞬間が、完全に見落とされてしまいました。

 今のラーメン分類化の混乱の要因は、まずそこにあると考え、僕なりに整理してみました。