1.分類化されたラーメンの混乱
 

 現在、全国のラーメンを分類化すると、一般的には“豚骨ラーメン”“醤油ラーメン”“味噌ラーメン”“塩ラーメン”と、スープの特徴によって大きく4種類(わゆる4大ラーメン文明)に分けられていて、各地のご当地ラーメンも基本的にはこの4つのカテゴリーのどれかに属すると言われています。

 しかし、僕は最近このラーメンの分類化に疑問を感じています。たとえば、“豚骨”という食材は豚骨ラーメンだけに使われるものと思われている方も多いようですが、実際は、関東の琥珀色の醤油ラーメンも、函館の透き通った塩ラーメンも、そのスープの主な素材として豚骨が使われているのです。ただし、そのスープには、鶏骨や様々な野菜類、そして昆布・鰹などの海産物などの食材が、豚骨と組み合わされています。一方、九州の豚骨ラーメンも、店によっては豚骨の他に鶏骨や野菜を加えるところもあり、また多くの店が豚骨スープの隠し味として“醤油”を使用しているのも事実です。

 このように「豚骨100%のスープが豚骨ラーメンで、スープに豚骨以外の食材を1つでも加えたら豚骨ラーメンではない」という素材による分類化、そして「スープに含まれる醤油や味噌などの調味料の有無」での分類化、近年このいずれの分類化にも矛盾が生じてきました。さらに、近頃は全国的に豚骨ラーメン(スープ)がブームのようで、関東や札幌などでは、元々その土地に根付いていたラーメンに豚骨ラーメンが合体したような、濁った新種のスープに人気があり、いつのまにか“豚骨しょうゆ”とか“豚骨みそ”“豚骨しお”という新しいラーメンのカテゴリーが加えられるようになりました。

 言うまでもなく、その新しいカテゴリーにもハッキリした定義はありません。

 かくのごとく、ラーメンの分類化を豚骨という“素材”や醤油という“調味料”だけで単純に分類化するのは、本当に不可能な時代になってしまいました。