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第百二十八話 ジャズとラーメン

 僕のラーメン店では、二十年ほど前からBGMにジャズを流しています。今でこそ居酒屋から、はては寿司屋までジャズを流すお店が出てきていますが、二十年前ジャズのBGMを流す店といえば、それこそジャズ喫茶かショットバーくらいでした。ですから当時はよくお客さんから「何でラーメン屋にジャズなの?」という質問を受け、僕はこう答えていました。「たとえば、クラシックは白人の王侯貴族に雇われた音楽家が、王侯貴族のために創った音楽。一方ジャズは、かつてのアメリカ南部で人種差別と貧しさに生きるアフリカ系アメリカ人(黒人)たちの中から自然発生した、自分たちの魂の音楽です。僕のラーメン屋も、元々は戦後の貧しい一軒の屋台から始まりました。ラーメンそのものも、いわば社会の底辺から生まれたものです。音楽にたとえるならば、やはりその生い立ちがジャズに近いものを感じて、BGMをジャズにしました」と、まあこのような説明をしていました。そして最近ある本で、一般的な飲食店のBGMはどのような音楽がふさわしいのか?というタイトルの記事を読んだのですが、飲食をするお客さんが、食事や会話に耳障りを感じないのがやはりジャズでした(静かなインストゥルメンタル・ジャズ)。要するに、高級レストランは別として、クラシックはかしこまりすぎるし、歌謡曲やポップスは、それぞれの曲調がバラバラなので、お客さんのテンションとの差が生じ、曲によっては不快感を与えるということでした。これを読んだ僕は「うん、自分は間違っとらんやった」と、ほくそえんでしまいました。しかしながら僕がさらに思うのは、何でもかんでもどんな店にもジャズを流せばよいというものでもありません。やはりそのお店の意匠・環境・空間というトータルなコンセプトがきちんとしていなければ、ジャズのBGMを流しても、それは浮いたものになるでしょう。
 今回はジャズの話を偉そうに書いてしまいましたが、実は・・・、僕はジャズ愛好家でも何でもなく、僕が好きなのは七十年代のアメリカンロックなのでした(苦笑い)。

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