〜前号からの続き〜
明けましておめでとうございます。本年もコラム「ラーメン外伝」を宜しくお願い致します。
前号12月のクリスマスに続き、今号は「正月」の時期と重なった目出たいシーンをお届け致しまする。
元旦の朝、光が目を覚ますと、またも枕元に何かある。それは祝いの〈のし袋〉だった。のし袋には、明らかに昇の筆跡で〜おとし玉 三太より〜と書かれてあった。封を開けると、100円札が1枚入っていた。
2段ベッドを駈け降りると光は昇に抱きついた。「父ちゃんありがとう」
昇はわざとらしくとぼけて言った。
「何のこつか? 礼なら三太のオヤジに言え。それより、きょうは元旦ぞ。別の挨拶があるやろ?」
「あ、そうか。では、父ちゃん、母ちゃん・・・」
玄関が開いた。「あけましておめでとうございます」端午の声がした。後ろにはきなこがいる。
「あけましておめでとうございます」きなこは美しい着物姿である。その後ろには善次郎がいた。
「アニキ、アニキのお陰で、こうやってきなこに着物も買ってやれたし、何ちゅうてもオヤジの目の手術もできた。ほんに感謝しとります」
端午は鼻をすすった。
善次郎も深く頭を下げながら言った。
「息子たちが大変お世話になっております。お陰さまで親子3人で暮らすこともできました。本当に・・・」
昇は手をふりながら「よかよか、さ、上がらんの」
長屋の軒のツララから滴がひとつ落ちた。
屋内では宴もたけなわである。
「♪あの娘をペットにしたくって ニッサンするのはパッカード♪」
端午が小林旭の〈自動車ショー歌〉を歌いながら踊っている。振り付けはなぜか〈安来節(どじょうすくい)〉である。鼻の5円玉も皆の笑いを誘っている。
昇も1升瓶を持ったまま踊りはじめた。
全員大笑いしながら手拍子をしている。
快晴の空には、いくつかの凧が揚がっていた。
どこからか羽子板の音がきこえる。
~次号へ続く~