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第九十一話 コバンザメになりたい

 TBSが昭和33年に放送した「私は貝になりたい」という有名なドラマがある。それは戦後BC級戦犯として捉えられた若い元兵士が獄中で書いた手記を元に構成されたもので、その手記の末尾「今度生まれてくるときは(中略)深い海の底の貝になりたい」という1文を静かにつぶやいて終わるというもので、戦争の理不尽と悲壮を描いたドラマであった。

 話は変わるが、長年経営者をやっていると本当に様々な出来事がある。良いことばかりではない。トラブルや事故も多い。そして昨年来のコロナの厄災。飲食業にコレはたまらん。しかしコロナに関しては意味ある天の啓示と捉え、「明けない夜はない」と信じて、ひたすらその終息を日々祈っている。
 そんな中でたまたまテレビの自然モノの番組を観ていたら、ジンベイザメやマンタ(イトマキエイ)などの大型の魚が映し出されていた。よく観るとそれらの大型魚の腹の下や体側には何匹もの細長いコバンザメが貼り付いている。この魚、サメと言ってもサメではなく、スズキ目コバンザメ科の硬骨魚である。後頭部にはその名の由来となった小判状の強力な吸盤があり、狙ったホスト(大型魚)に貼り付いたら滅多な事では外れない。1度張り付けば、その間泳ぐのもホスト。エサのおこぼれは頂き放題。獰猛な肉食魚もホストの図体がデカ過ぎて近寄れない。更にそのホストが弱ったり病気になったりすれば近くを通りかかった元気なホストに乗り換えればいい。「寄らば大魚の陰」である。何と他力本願で幸せな魚だ。
 この魚の生涯にはコロナも無かろうし、理不尽も悲壮も、クレーマーからの言い掛かりもないであろう。生物としての不平等とも言えるコバンザメの存在。一体どの神様が創った魚なのか、いたずら好きにも程がある。
 かく言う私も最近ふと思う。「今度生まれてくるときは、経営者でもなく、ラーメン屋でもなく、人間でもなく、広大な海を縦横に泳ぐ立派な大型魚に張り付いたコバンザメになりたい」と。
 そんなことを考えていたら突如天の声が聞こえた「お前は修行が足らぬ!」・・・げな。
 まだまだ弱音は吐けないようだ。

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