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第九十一話 雨の降る日に

 きょうは未明から雨が降っているようです。濡れた道を走る車の音で目が覚めました。午後になっても止む気配はなく、たまの休みも何をするでもなく、窓を開けると町並みが雨に白くかすんでいます。こんな日はテレビも消して、ただ外の雨音を聞いて過ごすことにします。
 「ゆらぎ」というのでしょうか、不規則だけど心地よい雨だれの音に包まれていると、なぜか懐かしい気持ちになってしまい、心の底で色あせてしまった昔の記憶の端切れがフワリを舞い上がるときがあります。忘れていたはずの友の顔や風景が次々と現れては消え・・・。このコラムも、九九年四月に始まり早八年。もうすぐ一〇〇回を迎えようとしています。その間の懐かしい場面が、雨音と共に次々と去来します。
 第一回ラーメンフェスタの群衆。陽気なラーメン店主。いかめしいラーメン店主。ワガママなラーメン店主。百面公園の北に横たう筑後川。TV愛の貧乏脱出大作戦の撮影。投げやりな修行者。怒る達人。矢部村・飯干小学校の校庭を裸足で走り回る子供たち。同校の廃校。校舎の解体工事。校舎の廃材で建てたラーメン店。そのラーメン店で行われたかつての先生の卒業式。先生の涙。徹夜で新作ラーメンを開発するスタッフ。国民文化祭のラーメンフェスタ会場に立ち並ぶ二十数店のラーメン店の壮観。トロフィーを受け取る一風堂の河原さん。酔っぱらった佐野さん。それを世話する大砲ラーメンの店長たち。フェスタ最終日の集合写真。スタッフの笑顔と泣き顔。ロサンジェルスのイベント出店。アミーゴしか言わない人の良いメキシコ人。喪に服すアメリカ中の半旗。独立する社員の希望と不安の顔。送別会の出し物で爆笑する社員。遅刻して頭を丸めた副長の照れ顔。結婚式ラッシュ。そして久留米初の全国封切り映画の撮影。二度に渡る撮影断念の危機と、その奇跡的回避。本番前の役者さんの顔。監督と方言指導のやりとり。新世界を走るリヤカー。夏祭りの行列。みぞれ降る冬の筑後川。一斗缶の焚き火。三日間徹夜でムクんだ助監督の顔。花束をもらったキャストの満面の笑み。クランクアップ直後の入院(ワタクシ)。娘の上京・・・と、無限の走馬燈のように現れます。その中に印象深い顔が二つあります。
 それは僕が麺工房(製麺工場)を立ち上げた十年ほど前からお世話になりっぱなしで、去年の秋も台湾研修に同行していただいた製粉会社のMさん。そしてうちの元社員のF君です。彼は物静かながらも、ラーメンを作る姿がとても絵になる味のある青年でした。
 映画~卒業写真~は、ある病院のホスピス病棟の六階フロアを借り切って撮影されました。後で知ったのですが、このお二人は、まさにその映画の撮影中同じ病棟で、Mさんは上の七階、F君は下の四階で亡くなっていたのです。しかも映画の主人公と同じような亡くなりかたで・・・。
 たようで、ただ畏れ中に佇むだけでした。
 でも、いま走馬燈に現れるお二人の顔は、とてもおだやかで優しい笑顔です。Mさんの後ろには幻想的な台湾の夜市の風景が見えます。F君の向こうには、立ち昇る麺釜の湯気と、おいしそうな顔したお客さんたちが見えます。
 走馬燈はまだ廻り続けているようです。雨もまだ止みそうにありません。