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第六十二話 初代熱風録(改)(1)

 映画「ラーメン侍」の原作となった、13年前に私が書いたコラム。それを修正・加筆したものを、今回より数回に分けて掲載させていただきたい。

 久留米や博多の方なら当然ご存知の「ラーメン屋台」。のれんをくぐるとすぐカウンターがあり、せまい長椅子に座れば、隣のお客さんとの肩が触れ合うような小さな空間。湯気の向こうには無愛想な店主と言うより「オヤジ」がいる・・・おおよその屋台がこんな感じだろう。
 そこで読者諸氏にはオヤジ側から見た屋台の店内をイメージしてほしい。目の前にはスープの釜があり、その湯気の向こうのカウンターには2人の男性客がいる。すると、突然その一人が座ったまま、のれんの外に忽然と消えてしまった。驚く間もなく外から聞こえる鈍い音、うめき声、そして走り去る足音・・・。さて一体何が起きたのか?
 これは60数年前の実話である。当時私の両親が営んでいたラーメン屋台での出来事。目撃者は私の母で、人間消滅(?)の真相は次の通り。
 外の物音とうめき声を聞いた母があわてて外に出てみると、さっきまで横にいたはずのオヤジがそこにいて、拳を握り締めたまま仁王立ちしていた。母は恐る恐るオヤジに尋ねた「何があったとね?」。オヤジ曰く、「お前は気づかんやったろうばってん、実は…」~男性客が1人でラーメンを食べているとき、別の男が入ってきた。ふつう先客がいれば離れた席に座る。ところがその男は先客の横にくっつくように座った。最初は「つれ」と思ったが、先客の迷惑そうな顔を見たら、そうではないようだ。そのうちあとから来た男が先客の耳元で何かささやいた。すると先客の迷惑そうな顔が、みるみる恐怖の顔に変わった。そのときカウンターの下でキラッと光る物が見えた。「そいつはドスでカツアゲしよったったい」・・・それに気づいたオヤジは忍者のごとく裏からそっと出て表へ回り、のれんの割れ目からスッと手を差し入れ、男の襟を後ろからからムンズとつかむや否や、思いっきりのれんの外へ引き倒した~ということで、母が見た「人間消滅」はこの瞬間で、直後に聞こえた鈍い音とうめき声は、路面に引き倒された男が、オヤジからお仕置きを受けている音風景だったのだ(当然「走り去る足音」とはその男が逃げ去るときのもの)。
 今では想像もつかない荒っぽい話である。しかし当時は、敗戦でまだまだ国民の心がすさんでいた時代。そんな時代にまして夜の屋台を営むには、それなりの覚悟と腕っ節の強さが必要だった。 オヤジにはそれが見事に備わっていた・・・、というかオヤジの場合腕っ節が強すぎて、明治通り中の屋台の用心棒的存在であった。あちこちの屋台でトラブルが発生する度に、オヤジに「出動要請」があり、本業より忙しい有様だったという。