お店をお探しの方はこちらから
久留米 大砲ラーメン公式通販サイト【全国配送】お店の味をそのままに本物をお届け
24

第七話 手前味噌ラーメン

 今回も引き続き「味」ついて恐縮ながらもうひと講釈。
 かつて久留米育ちのラーメン好きのお客さんたちからよく耳にしていのが「東京でラーメンば食べてみたばってん、アラなんや、スープは真っ黒でマズくて食えん」。また逆に、初めて九州の豚骨ラーメンを食べた東京出身者のほとんどは「クサくて食べれない」と言われてました。まさにこの人たちは、自分が育った地域で親しんだラーメン以外は受け入れられない“ふるさとのラーメンによる呪縛状態”とでもいいますか・・・。
 さて、「手前味噌」という言葉があります。その昔、ほとんどの家庭で味噌は自家製でした。無論、生まれ育った我が家の味噌の味は一生忘れられない故郷の味です。当然、「我が家の味噌が一番ウマい」と人に自慢したくもなります(実際人間の味覚は、幼年期から思春期前までに体験的に形成されてしまうそうで、これを僕は“味覚のインプット期”とよんでいます)。このように今では、「手前味噌」という言葉は“自分の自慢話”の前に添える慣用句になったそうです。現代、ほとんどの家庭の味噌は“近くのスーパーで買ってくる地元メーカーの味噌”にとって代わりましたが、「手前味噌」は“家庭”から“地域”へとその単位をかえて、今なお各地方に根付いているようです。
 余談ですが、僕が学生時代、バイト先の定食屋のマスターが、本人曰く「日本一ウマい」という味噌を、わざわざ東北の仙台から取り寄せて僕に分けてくれました。僕は喜び勇んで早速下宿に持ち帰って「日本一の味噌汁」を作ってみたところ、これがまたショッパイ、しょっぱい。まるで塩水。塩分濃度が高いのでしょう。しからば、いつも使ってる地元九州の味噌の半分の量にして再度挑戦したところ、今度はしょっぱさはいいが味噌の風味とコクがない。世話になったマスターからせっかく頂いたものなので処分する訳にもいかず、結局、九州の味噌に少しづつ混ぜながら使っていたという思い出があります。ちなみに、面倒見のいい江戸っ子のマスターから頂いた「日本一の味噌」をやっとの思いでを食べ尽くしかけた頃、またもウッカリ頂いてしまった「日本一の醤油」 ・・・・これも同じ結果でした。いや、決してこれらがマズかったということではありません。ただ僕の「好み」に合わなかっただけで、ゴカイのないように。「手前味噌」と「お国自慢」、食の世界でも同意語のようです。
日本人の“味覚のインプット期”に最も影響を与える調味料が「味噌・醤油」なら、「料理」というカテゴリーでみると、それはやはり「ラーメン」でしょう。いろいろな地方の人たちが集まる席で、それぞれの「お国自慢」に花が咲くとき、よく出る話題は「ラーメン」。酒が進むごとにその話題は熱を帯びて・・・
 
~とある居酒屋。全国各地から集まった6人の男女がラーメン談義をしている~
京子: 「東京のしょうゆラーメンが一番です。」
熊男: 「そぎゃんこつなか。 ホー、ニンニクたっぷりで ホー、スタミナんつく熊本ラーメンがウマかっどー、ホー。」
博太: 「フクロウか?きさん、博多んラーメンのほうがメジャーじぇ。」
久雄: 「なんば言いよっとかお前たちゃ、久留米が九州ラーメンのルーツちゃ知らんめー?」
京子: 「東京のしょうゆラーメンが一番です」
久雄: 「まーだ言いよっとかお前は、いまは九州ラーメンのハナシやろうが。」
雪子: 「やっぱ北海道の旭川ラーメンがおいしいっしょー」
博太: 「いつ来たとや、きさん。あっち行きやい」
隆盛: 「おはんたち喧嘩はこんぐらいにしモッそ。ここはひとつ、かごんま(鹿児島)んラーメンが一番ということで日本国はまとまりモッそ。」
博太: 「幕末や?きさん、帰りやい。」
隆盛: 「幕臣のおはんらとはサラバでごわす。薩摩は再び鎖国しモッそ。」
京子: 「東京のしょうゆラーメンが一番です。」
久雄: 「たいがいにせんかお前たちゃー。」
雪子: 「旭川ラーメンがおいしいっしょー」
 
~やがて、ワケのわからないこの会は、一段と収拾がつかなくなってゆく~
 と、まあこんなシチュエーション(当然フィクションです)でしょうか。最近、全国的な“ご当地ラーメンブーム”とやらの影響で、僕の店でも、情報誌などを片手に“クサイ”豚骨ラーメンをおいしそうに食べられている関西や関東からのお客さんたちが増えました。これは一見、ラーメンを食べる人たちの“ふるさとのラーメンによる呪縛状態”が、緩やかになってきたようにみえますが、さにあらず。この現象は、マスコミを中心とした“ラーメン仕掛け人たち”による「暗示」現象でしょう。マスコミが“行列のできる店”とか“ラーメンのチャンピオン”とかはやしたれれば、暗示された人たちにとっては「クサくて食べれない」ラーメンも「おいしいラーメン」にバケてしまうのです。そんな暗示はすぐに解けてしまいますし、その人に長年蓄積された“味覚のインプット”にはかないません。そしてラーメン観光の旅から帰った人たちは、まっ先に「ふるさとのラーメン」に舌鼓を打ちながらつぶやくことでしょう。
「やっぱりこのラーメンが日本一」と。