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第三十七話 函館・塩ラーメンサミット・その3

 熱海で出会った数日後、岡田さんはさっそく両手一杯のお土産を提げて久留米に来られました。もちろん目的は「ラーメンフェスタin久留米」の調査・研究です。僕の事務所には、過去2年分のフェスタの膨大な資料があります。僕はその資料を1つひとつ説明しながら、中でも運営上必要と思われる資料はコピーして岡田さんにお渡ししました。(フェスタは営利目的ではないので一般の会社のような機密事項はありません)。
 岡田さんは、その資料を宝物のように大切に持ち帰られました。
 そして、ひと月後の8月でしたか、「愛の貧乏脱出大作戦」の収録を終えたばかりの頃、今度は僕が函館によばれました。岡田さんの声がかりで集まった函館市内の製麺組合の方々や、僕と同じラーメン屋さんの方々に、町おこしとしての“ラーメンフェスタの効果”を伝えるためです。しかし!“たった2日で10万人の人を集める”というラーメンの持つパワーを、会場のほとんどの人が信じようとしません。「それは久留米だから出きたことだべー」とか「北海道のお客さんは外に並んでまでラーメンを食べてぇとは思わんしょー」等々否定的な意見ばかり。でも、考えてみれば、僕自身、2年前に初めてこのフェスタを企画したときは、とにかく不安ばかりで「だーれん来んかったらどげんしゅー」また「事業予算が1千万円げな、こりゃ赤字こいたら夜逃げせなんばい」・・・こんなことばかり考えていました。まさか、10万人の人が押し寄せ、マスコミが押し寄せ、あんなに異常な盛り上がりをみせるとは、夢にも思いませんでした。函館の人たちにとって、話には聞いても、実際のフェスタを目の当たりにしてないものですから、信じがたいのも無理はありません。僕の姿が“南から来たペテン師”に見えたことでしょう。
 長時間の質疑の末、最後にペテン師は熱く語りました。「函館と久留米には、“不景気の町”というあまり嬉しくない共通点があります。ばってん、函館の方が絶対的に優位な部分があります。それは北海道でも指折りの観光資源と、そこに集まる年間5百万人という観光客です。一方、久留米には観光客どころか観光資源すらありまっせん。でも、観光資源ちゅうのは、いわゆる名所旧跡や景観だけを言うとでしょうか?“文化”は観光資源にはなり得んとでしょうか?否!その答えをラーメンフェスタが証明してくれたとです。最後に、函館と久留米にはもう1つだけ共通点がありました。それは塩と豚骨、各々のラーメン発祥の地という文化財産です。ラーメンフェスタ、やりましょう!」

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