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第七十三話 大日本停電計画(改)

 現在、大砲もほとんどの店舗は従業員不足である。これはラーメン業界に限らず、飲食業全体が抱える共通の悩みだ。その原因は、まずは少子化。加えて団塊世代が高齢化し、すでに継続雇用の年齢も超えてしまった。それにともなう企業の新規雇用の間口の広がりが、いわゆる3K職場といわれる業界へのわずかな応募者をも吸い取っているという現状だ。しかし、この国に少子化という問題さえなければ、どんな業界にも人はまんべんなく流れ込み、国の産業は維持し発展するもの。夫婦が最低2人以上の子供を作らなければ、やがて近い将来、就労人口と非就労人口が逆転して国は完全に破綻し、日本は消滅してしまう。この問題に対して国もいろいろな対応策を模索しているようだが、それは出産や育児の費用等の経済的支援が中心のようだ。はたして夫婦が積極的な子作りをしないのは経済的な問題だけなのだろうか? であるなら、決して経済的に豊かとはいえない途上国の夫婦が子沢山というのは?
 やはり最大の問題点は我が国の「夫婦の価値観」の変化にあるのではないだろうか。「子育てより夫婦だけでもっと楽しみたい」「子供より自分の人生」最近このような価値観の若い夫婦が増え、それが少子化という現象に繋がっているのではないだろうか。ではなぜ多くの日本の若い夫婦がこのような価値観を持つようになってしまったのか。その元凶はやはり戦後の教育にあるようだ。占領軍が残して行ったアメリカ的自由(快楽)主義と、革新系の人たちから刷り込まれた日本的伝統の排除と個人の権利意識、そのるつぼの中で育った子供たちが長じて、摩訶不思議な価値観を持つ夫婦が増えてきたのかもしれない。もう、ウカウカしていられない。政府の子育て支援も、その効果は疑わしく、特効薬にはなり得ないだろう。そこで私は考えた。市井のラーメンおやじのアイデアだが、それは題して「大日本停電計画」。
 以前アメリカで実際に起きたことであるが、1965年、ニューヨークが大停電に見舞われた。するとその10ヵ月後のある日、ほとんど同時にニューヨーク中で赤ちゃんの産声が上がったのだ。 調べると、市の出生率が3割も増加したそうだ。もうおわかりだろう、テレビもラジオも使えない暗い部屋で、あかりは一本のローソクだけ。ゆれる小さな炎越しにいるのは見慣れたはずのカーチャンだけど、今夜は何やら色っぽく見える…。トーチャンのハゲ頭だって闇にとけ込んでいるから何だかダンディ…。出会った頃を思い出した夫婦はやがて自然に…。そう、停電は回春剤でもあるのだ。
 コレである。我が日本も国を挙げてコレをやるべき。もう夫婦の価値観もへったくれもない。具体的計画内容として、まず何月何日は年に一度の全国大停電の日と定める。ただし医療や救急などの国民の命や健康に関わる機関だけを例外とし、それ以外は会社も商店もすべてその日は18時で休業。同時に戒厳令が布かれ、国民は一切外出禁止。19時、子供および高齢者は就寝。20時、全国の送電が停止。あかりは1部屋1本と決められたロウソクのみ。パソコンもゲームも禁止(というか出来ない)。風呂はOK(これは効果的で実用的)。そう、このたった一晩の国家行事でイキナリ国民の出生率が3割アップは間違いなし。やがて新生児が生まれ、その子の受精が全国大停電の日であることが証明されたら、政府から「百発百中で賞」として「フィラメントが切れた電球を抱いた赤ちゃん」の銀メダルが授与される、それが双子なら金メダル。3つ子以上なら、天皇陛下より菊のご紋入り純金製ほ乳びんが下賜。どうだろう、これぞ少子化問題起死回生の特効薬である。 そう、ときに停電は国家を救うのだ。

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