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第百三十六話 初代熱風録エピソード4

 先生は、その女の叫び声は2階の僕の部屋から聞こえたと思いました。「ついにアイツら、タバコだけに飽き足らず、とんでもないことを始めやがった」そう思いながらも、よく聞くと、その叫び声は下のラーメン店から聞こえていたのです。先生はスワ事件かと、思わず店に駆け込みました。するとその声の主は何と僕の母で、ヨッパライに迫るように叫んでいるのです。その状況、後で母に聞いた話では、そのヨッパライは、酒をたらふく飲んだあとラーメンを食べて、さてお勘定というとき「おいコラ、幾らか?」母が愛想良く「○○円です」と言うと、ヨッパライ「そうか」と言いながら財布から1000円札を抜き出すと、母の鼻先にヒラヒラさせながら「そげんカネが欲しかなら、市の上(地名)のオレの家まで取りに来い」それを聞いた母は、さすがに堪忍袋の尾が切れて。「何でいま持っとるカネをアンタんがたまで、もらいに行かないかんとか!ラーメン屋をバカにするな!」するとその光景を見ていた僕のオヤジが、そっと後ろから母に近づき、ニヤニヤしながら耳元でささやきました。「デヤされろ。俺が先に手を出したら、今度こそ懲役やけん、お前が先にデヤされろ」それを聞いた母はヨッシャとばかりに「ホラ叩け!叩かんか!」と、ヨッパライに顔をすり寄せながら叫んでいたのでした。その叫び声を聞いて店に駆け込んだのは、先生だけではありません。2階でたむろしていた僕たちの耳にもその叫びが聞こえ、何事かと、くわえタバコで駆け下り、店に飛び込んだのでした。店内には叫ぶ母、ニヤニヤしながら出番を待つオヤジ、くわえタバコの中学生たち、生活指導の先生、これらが渾然一体となった異様な空間です。ヨッパライはさすがにひるみ、いたたまれなくなって逃げ帰ってしまいました。やがて皆、何事もなかったように、オヤジは厨房に戻り、母は洗い物を始め、僕たちは2階に戻り、先生は去りました。
 そのとき先生は思ったことでしょう。「中学生を補導する…、そんな問題ではない。ここは治外法権の別世界なのだ」と。