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第二十六話 愛の貧乏脱出大作戦(1)

 「捨てる神あらば拾う神あり」と言いますが、魁龍の華々しいオープンを見届けて、ここに残ってしまいそうな念を振り払うようにラー博を立ち去ろうとする、まさにその瞬間、東京のテレビ局から僕にある番組の出演依頼の連絡がありました。
 その番組とは「愛の貧乏脱出大作戦」。そう、“売れない店の主人を、その道の達人が貧乏のどん底から救い出す”というアノ番組です。何と僕に、その“達人”役で出てくれというものです。今度は“目からウロコ”ではなく“目が点”でした。「なんでオレが達人や?股間はまだまだ“立人”かも知れんバッテン・・・」
 そんなこと言っておちゃらけてみても、受話器の向こうでは、TVディレクターが必死に何か説明しているようです。僕はただ呆然と考えていました。店の数字はどうか知りませんが、いままで一生懸命に商売を頑張ってこられたであろう同業の方の大切な人生が、イキナリ現れた初対面の“達人”から左右されるのです。そんな責任重大な恐ろしい仕事が僕に出来るだろうか?それに耐えれる器が僕にあるのだろうか?
 僕が出演を躊躇(ちゅうちょ)していると、ディレクターは「5日後には撮影を開始します。もう時間がありません。いま決めて下さい」僕は一瞬の内に考えました。いろいろあった魁龍のラー博出店の件も、何とか自分なりに整理ができ、ふっと心に隙間ができた途端、降って湧いたようなこの話。もしかしたら神様が、「お前には休む暇なんか与えない」とばかりに試されているのでは?これは天が与えた試練かも?そう思ったら何となく勇気が湧いてきて、遂に引き受けてしまいました。
 その後は濃縮された撮影スケジュールが待ち受けていました。局との打ち合わせが2日後の7月13日。撮影開始が18日から約1週間。ロケ地は、佐賀県多久市の依頼人の店と久留米の僕の店との往復ロケ。1日の撮影時間は早朝から深夜まで無制限。当然撮影期間は僕の通常業務は一切できない状態です。
撮影班は何かと、カメラ・照明・音声全て2台体制で、依頼人担当と達人担当の2班に分かれています。VTRのテープは、カメラが一週間2人に向かって回り続けるため100本以上も準備されています。こんなに大がかりなテレビの取材体制は初めてです。僕もこれに対応するべく、社内で店長クラスを中心にチームを作り、受け入れ体制を固めました。
 そして撮影前々日、依頼人のプロフィールが書かれた資料が僕のもとへ届けられました。依頼人の名は中山昇氏。
 現在、佐賀県多久市でラーメン店を営まれており、離婚後奥さんに息子2人を連れ去られ、孤独な独り暮らしの中でヒマなラーメン店(一日の客数約20人)の経営と道路工事のアルバイトで生計を立てている、絵に描いたような苦労人です・・・・。撮影開始と共に、この人の人生の奥に、僕は入り込むことになるのです。もう後にはひけません。
~かつて司会のみのもんた氏が、「依頼人が修行を断念すれば、その依頼人の店の改装工事も中止し、それはそれで事実として放送します。当番組の方針としてヤラセはしません。」と言われていたのを僕は憶えていますが、いま、撮影を振り返るとまさにそのとおりでした~・・・・そしてついに撮影の日はやって来ました。