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第八十九話 鬼の霍乱

 1999年より21年に亘り2誌通算233話のラーメンコラムを書いてきたが、前回11月号は急遽執筆を休ませていただいた。理由は緊急入院。突然の腹部の激痛に我慢できず緊急搬送を要請。検査の結果「腸閉塞」という診断で2週間の入院と相なった。
 日頃の不養生が体のあちこちに祟っているので鬼の霍乱とは言えないが、いずれにしてもこんな稚拙なコラムでも楽しみにしておられる読者の皆様には、誠に申し訳なく思っている。そんな皆様に今後の参考になればと考え、私がこの度体験した「腸閉塞」について少々お伝えしたい。厳密には診断書に「小腸イレウス」と記されていた。症状は、胃の下部辺りがとにかく痛い。凄まじく痛い。原因は私の場合「暴食」であったという。思い当たる節はある。その日の夕刻、家内は父親の誕生祝いに出かけた。ひとり晩酌を余儀なくされた私は、YouTubeの釣り動画を観ながら近所のコンビニで仕入れた肴代りのコロッケと特製肉まんで焼酎のお湯割りを楽しんでいた。やがて肴と焼酎で腹も膨れ酔いも回り始めた頃、ふとリビングのテーブルの上に置かれた夕食一式の存在を思い出した。家内が私の夕食を準備していたものである。時計を見るとそろそろ帰宅する時刻。「こりゃイカン、食わにゃあイカン」私は慌てて飯と肉野菜炒め、その他のおかずを膨らんだ腹に無理に押し入れた。これが一番イカンやった。その深夜、突然の腹痛と嘔吐が始まった。要するに胃に押し込められた許容量以上の食べ物が、細い小腸へと流れ込みきれずに詰まってしまったのだ。自業自得である。しかし腸が破裂でもすれば死に至る場合もあるという腸閉塞、それは入院後も地獄であった。先ずは3日間の絶食。水を飲んでもすぐに戻すのだからそれは当然。水分と栄養分の補給は点滴のみで、その間も周期的に激痛に襲われる。4日目から食事は重湯となり腹痛も痛みの間隔が長くなる。その後日を重ねるごとに薄皮を剥がすが如く容体は徐々に好転し、2週間後にはほぼ快癒した。
 一度地獄の淵を覗いた私には長いなが〜い入院であった。退院のその日私は心に誓った。「もう暴食はしないぞ」と。またその期間の禁酒のおかげで肝臓の数値も良くなり、返って健康になった気もして心も清々しい。あまりに気分が良いので「退院祝い」と称してその夜、夫婦で行きつけのイタリア料理店に行った。日に3度の病院食を何日も食べざるを得なかった私には久々のご馳走・・・思わず食べすぎた。しかもワインをフルボトル1本空けてしまった。
 当然、家内からガバがられた。だいぶ愛想を尽かされた。
  以上が自らをコラム執筆休止に至らしめた愚かな男の顛末である。許されたし。

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