ラーメン今昔物語(43)『ドラマの中のラーメン屋』 

ラーメン屋のH.K
          
  先日、僕の一番好きなTVドラマ“北の国から”が最終回を迎えてしまいました。 21年も続いたこのドラマの熱烈なファンは多く、皆さんも僕同様、とても名残惜しい思いをしてることでしょう。 “北の国から”シリーズには、その長い年月のなかで数々の名シーンがありました。 その中のひとつ“北の国から'84夏”より僕が印象に残ったシーンを、つたない記憶のままに紹介させて下さい。

(シナリオ調で)〜ある夏の日の夕暮れ時。兄の純と妹の蛍はまだ小学生。 二人は父・五郎と三人で、閉店時間間際のひなびたラーメン屋のテーブルに座っている。 五郎がラーメンの注文を終えると、わずかな沈黙が流れる。薄暗い店内には、やる気のない女性店員一人と客の五郎たち三人のみ。 テレビの音だけが無機質な音で流れている。
  先刻より元気なくうなだれていた純が静かに喋り始める。
純「父さん、ごめんなさい…。最初に(事故を起こした)イカダに乗ろうと言い出したのは僕の方で…」  
  純は五郎に隠していたことを、懸命に涙をこらえながら告白し始める。五郎は黙って聞いている。店員がラーメンを持ってくる。
店員(迷惑そうに)「もう閉店の時間ですから早くしてくださいよ」
  投げやりにラーメンを置かれて、五郎はぺこりと頭を下げる。五郎と蛍はラーメンを食べ始めるが、純はうつむいたまま話を続けている。店員はカウンターに座って退屈そうに煙草をふかしている。
純「それから…(友人の)パソコン雑誌を黙って持ち出したのも僕で…」
  純はまだラーメンに手を付けず、告白を続ける。涙があふれている。
  いつしかテレビが消され、三人の帰りを促すように店内の電気が消される。三人はわずかな明かりの下でテーブルを囲んでいる。
純「僕は卑怯で…」
純の涙が床にこぼれ落ちている。 五郎は、自分もかつて純から「父さんは最近パワーがなくなった」と指摘され、 そのことで気づかせてもらったことを素直に純に伝える。
  そこで店員が、うんざりしたように言う。
店員「ねえ、まだですか?」
 五郎は再度店員に頭を下げる。蛍が兄をいたわるように優しく言う。
蛍「お兄ちゃん、食べよう」
  ようやく純はのびたラーメンを食べ始める。しかし涙でのどを通らない。 五郎は店員を気遣ってポケットから小銭を取り出し、先に勘定を済ませる。

  すると店員は食べ終わってない純の丼をいきなり下げようとする。そんな店員に、静かな五郎が初めて興奮する。
五郎「こ、子供がまだ食ってる途中でしょうが!」  

  驚いた店員は、思わず丼を床に落としてしまうが、そのままプイと立ち去ってしまう。 店員がいなくなった暗い店内。三人は床にしゃがみ込み、割れた丼を片づけている。 妹は兄を、そして父親は息子をいたわるように…(テーマ曲IN、F・O)  

  いかがでしたか?皆さんはこのシーンを思い浮かべながらどう感じました?

‐次号も乞うご期待‐